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お笑い機械翻訳2題

1題は重い話。もう1題は軽いお笑いです。翻訳者の掲示板での軽い話題から始めましょうか。

ある翻訳者が翻訳依頼のメールを受け取った。機械翻訳にかけたとおぼしき英文で、

「・・・・how cobras by word?・・・・」

どうやらワードあたりの料金を教えてくれと言いたいようなのですが、「コブラ」ってのが、ありゃりゃ???です。で、この翻訳者さん、ユーモア感覚にあふれた方で、こんな風に返信した。

「ワードあたりコブラ8匹。毒の強いやつでお願いします」

で、依頼者はいったい何を言いたかったのだろうか、という疑問を訳者さんが掲示板にアップしたら、数人から同じ内容の回答がありました。

英語の charge(代金を請求する)に相当するスペイン語の cobrar の二人称単数形が cobras なので、機械翻訳にかけたら、そのままヘビになってしまった、と。なるほど!

もう1件の重い方は、書籍の一部が機械翻訳のまま出版され、回収騒ぎに発展という事件。

いきさつは次の記事に詳しく紹介されています。後半部分に、Amazonのレビュー欄に掲載された「訳者からの事情のご説明」が引用されているので、ここをよくお読みください。

http://gigazine.net/news/20110730_randomhouse/

このURLに、すでに出版社名が表示されてますけど。

回収すればいいってもんじゃないし、問題なのは、お詫びを自社ウェブサイト上に掲載したというのですが、これがトップページじゃないんですよね。少なくとも8月3日の時点では。

それよりもさらに問題だと思うのは、「校正・校閲の不十分な箇所がございました」というのが弊社の誤りであったと言っているわけで、機械翻訳が悪い とは言っていない。「機械翻訳にかけて、校正・校閲すれば、翻訳はそれでいいのだ」と公言してはばからないってことですよね?翻訳者はいらないと言ってい るのと同じでしょ?

前の軽い話題に登場した cobras だって、結局は当人の訳者さんには何のことかわからず、スペイン語専門の訳者さんたちの助けを借りる必要があったんですよ。1冊の本を機械翻訳にかけて、 その中に何ヵ所、「コブラ」が登場すると思っているのか。校正・校閲をする人は、そのたびに「なんのこっちゃ?」と頭をひねり、それでもわからず、翻訳者 の掲示板で質問する羽目になるのでは?

機械翻訳にはそれなりの使い方があるわけで(定型文とかね。それと個人的なメールで、間違っても、その後のやり取りで訂正できる場合とか)、今回は その領域を踏み外した使い方をしてしまったわけです。出版社にそれがわからないはずはない・・と思いたいのですが。監修者と編集者の間に何かあったとか、 急遽、別の訳者や校正・校閲者を見つけられない状況(会社にお金がない・・)であるとか、そういう裏事情があるのでしょうか。

ぶっちゃけた話、お金さえあれば、どんなに緊急であろうが、どんな事情があろうが、翻訳はできるのです。

以前、英語で書かれた話題沸騰の本が出たときに、出版社が「この内容じゃ、話題が沸騰している今すぐに出版して、すぐに売り切ってしまわないと、全 く売れない」と判断したようで、猛スピードで翻訳をしました。監訳者の名前がいちおう付きましたが、実は、100人ぐらいの訳者を使い、細切れに翻訳した のだそうです。

知人でスペイン語から日本語への翻訳をやっている人がいて、なんと、その人まで打診されたのだそうで。「スペイン語の翻訳者なんですけど」と言ったら、その出版社の人、「スペイン語ができるのなら、英語もある程度、見当はつくのでは?」だと。

でも、とにかくこの時は、売れるのがわかっているから、出版社がドサッと金をつぎ込み、翻訳者を100人使い、校閲者もたぶん大勢使い、いちおう世間に出せるものが完成したみたいです。

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