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2017年3月

病牀六尺

神奈川近代文学館で正岡子規展を開催中です。

港の見える丘公園には行ったことがなかったのですが、桜の季節になったら混むだろうなあと予想して、その前に行ってきました。

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「正岡子規展」のレタリング、いいよね。

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チラシとチケット。

実は子規の俳句などの作品は、特に好きではありません。日本文学の口語化や俳句の分類などの業績にも興味はない。興味があるのは、

死を前にして、どう生きるか。

これに尽きる。35歳という若さで亡くなったのですが、それまでの数年、肺結核から脊椎カリエスに病態が進行し、膿瘍ができ、腹部などに穴があき、関節が動かなくなり、全身に激痛。その中で、どう生きたのか。それを知りたいわけです。子規については、たぶん多くの人がそうではないかな?

「病床六尺、これが我世界である。しかもこの六尺の病床が余には広過ぎるのである。僅かに手を延ばして畳に触れる事はあるが、蒲団の外へまで足を延ばして体をくつろぐ事も出来ない。甚だしい極端の苦痛に苦しめられて五分も一寸も体の動けない事がある。苦痛、煩悶、号泣、麻痺剤、僅かに一条の活路を死路の内に求めて少しの安楽を貪る果敢なさ、それでも生きて居ればいひたい事はいひたいもので、毎日見るものは新聞雑誌に限つて居れど、それさへ読めないで苦しんで居る時も多いが、読めば腹の立つ事、癪にさはる事、たまには何となく嬉しくてために病苦を忘るるやうな事がないでもない。年が年中、しかも六年の間世間も知らずに寐て居た病人の感じは先づこんなものですと前置きして」

という前置きで、なんと、この方は、病人の毎日を新聞に連載するのです。ブロガーの大先輩ですわな。

やはり、明日もやることがある、と自分に言い聞かせ、一日、一日、生きてゆくことなのかなあ。余命1年とか言われても、それまで364日はあるんだものね。

今回の展示で知ったのは、母上と妹さんが根岸の家に同居して介護にあたり、文学界の仲間も多く、友人知己が頻繁に訪れ、サポート体制がしっかりしていたこと。これも大きかったでしょうね。愛情があり、知的刺激があり、ということで。

夏目漱石や高浜虚子との間に交わした書簡なども展示され、興味深い内容。特に、子規に師事していた虚子の場合、命が長くないことを確信した子規は、自分の後継者と目していたようなのですが、「勉強する気はないか?」とたずねたら、「ありません」と断られてしまった!まあ、虚子は芸術家だからね。子規のように勉強して評論や研究をするのは、ちょっと・・・、だったのかな。

5月21日までと期間が長いので、天気のいい日にでも観光がてら、お出かけになってみてはどうでしょうか。

教育勅語の馬鹿馬鹿しさ

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夏目漱石は「文学評論」でこう言っている。

「忠と孝と貞とは彼らが口を酸(す)くして説く教(おしえ)であるが、親の義務、君の義務、夫の義務はかつて説いた事がない。静かに考えて見ると頗(すこぶ)る馬鹿々々しい。理窟に訴えて少々考えて見ればこれ位の事は是非分らなければならん。しかるにも関せず、彼らはある一種の状態にある社会に生まれたためこの見やすきことをすら考えなかったのである。彼らの生れた時代は君が絶大の権利を有しておった時代である。親が無上の勢を振り廻した時代である。夫が妻を勝手に取扱った時代であって、しかも子たり臣たり婦たる者はこの偏頗(へんぱ)な道徳に馴れて自ら自己の不便不利益を感ぜざるまでに圧逼(あつひつ)を甘んじた時代である。」

教育勅語の忠義と孝行。まさにそれを漱石は「馬鹿馬鹿しい」とぶった切っている。

だいたい子どもの虐待がこれほど問題になっているのに、親に孝行しろって、なんだよそれ?そうじゃないでしょ。死なないためには、親から逃げてもいいんだよ、と子どもに教えてあげなきゃ。ダメ親からどうやって逃げるか。子どもにそれを教えることが焦眉の急ではないですか。

「親の義務」、「君の義務」、「夫の義務」。それを説かないでどうする!

あーしかし!100年以上前、明治に生きた漱石でさえ「過去の時代」として語っている、まさにその時代に、日本を戻そうと画策している人たちがいるみたいですね。

君(安倍)が絶大の権利を有し・・。ゲゲゲ。

この偏頗(へんぱ)な道徳に馴れて自ら自己の不便不利益を感ぜざるまでに圧逼(あつひつ)を甘んじた・・・ってことにならないよう、今、ふんばらなくちゃ。

14. 大混雑のチチェン・イツァ

4月6日(水)

一人旅は気楽でいいんだけど、時間に遅れないとか場所を間違えないとか、頼れるのは自分しかいないので、ちょっと勘違いしたりすると、もうアウトです。だから、行程が予定通りに進行しなければ、アッサリ諦めることにしているんですけどね。今回、メリダからバスでカンクンまで行く途中でチチェン・イツァという有名な遺跡に立ち寄ることにしていたのですが、そこで(というかその前に)大ポカをやってしまいました。

たいして何もせず、ブラブラしていただけなのに、セノーテで泳いで疲れたのか、ちょっと寝坊して、バスに乗ったのは8時。2時間ぐらい乗って、もう少しで到着というところで、なにげなく荷物の整理をしていて、気づいた。ありゃ、カード類を入れた財布がない!クレジットカード全部、それに入ってる・・・。宿を出てから荷物をほどいていないので、どう考えても、宿に置き忘れた。あ、そうか。部屋を出る直前にザックの中身を詰め直した。あの時だ。

バスを降りて戻っても良かったけど、もうチチェン・イツァに着きそうなので、とりあえず見物してから戻りましょうかということに。

でも、こういう時に、遺跡見物どころじゃないよなあ・・・と思案しながらチチェン・イツァに着いたら、これがもう、たまげたのなんの!大型観光バスが次々と到着し、それぞれのバスから30人とか40人とか、人の群れがブワアッと吐き出される。

ある程度、予想はしていたので、午前中に着くようにしたのだけれど、それでも甘かった。いや、これはもうダメ。来るんじゃなかった。以前に訪れたマチュピチュもそうでしたが、考古学に関心がない者にとり(関心があれば、自分の目で細かい部分を確認するという楽しみがあると思う)、遺跡見物の楽しみは当時を彷彿とさせる雰囲気なので、大観光地というのはどうしても、興ざめになりがちなのよね。

というわけで、おそらくユカタン半島で最も有名な観光地を、しかも高い入場料を払って、なんとなんと、走るように見て回ってしまったのでした。

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いちおう有名な建築物は見たと思うのですが、まったく記憶にない。こうして写真で見ると、たいして混んでいないように見えますが、これは人がいないところを選んで撮影したわけで。それに、話し声とか音楽とか、うるさいし。

いや、とにかく財布を取りに戻りましょうと駐車場に出て、スマホで宿に電話したら、すぐにわかり、確かに財布をフロントで預かっているとのこと。「Gmailのアドレスにメール送ったよ」と言われてチェックしたら、チェックアウト後の掃除で見つけたと説明がありました。

ああああとため息をつきつつ、それでも信頼できる宿に泊まって良かったとホッとしつつ、またバスに乗って2時間かけてメリダまで戻り、財布を無事に受け取り、今度は4時間かけてカンクンへ。なんだかず~っとバスに乗り続けたような1日でありました。まあ、旅行していれば、こういうこともあります。

あ、そうだ。カンクンまでのバスですごいことがあったのだ。

高速バスなので、停留所は少ないのだけれど、ある比較的大きな町でとまったときに、乗客がぞろぞろ降り、新たな乗客が乗ってきて、さあ出発かなと思ったら、乗ってきた女性がキャッ!と叫び声を上げた。縦も横も大きな人で、ドタドタと運転手のところに駆け寄り、大声で「ちょっと見なさいよ!」と、憤然とした口調で抗議です。

前の方の席だったので、通路に顔を突き出して見てみたら、ちょうどプ~ンと臭いもしてきて。ありゃりゃ。どうやら、前にそこに座っていた子連れの乗客が、降りる直前に、子どもにそこでウンチをさせてしまったらしい。

私と同じように、乗客はみんな首を伸ばし、口々に「うひゃー」なんて言うもんだから、車内騒然。

外の切符売り場にいた係員が新聞紙とバケツとモップを持って乗り込んできて、せっせと掃除です。でも、けっこう時間がかかり、乗客は遅れについてもブーブー。いやー、ビックリした~。

漢字クイズ

久々の漢字クイズです。

作品は林芙美子の「鴉」という短編。時代は終戦から数年後なので、それほど古くありません。ただ、市井の人々を描いた作家なので、その時代にまだ一般の人が使っていた当て字や古い言い回しが使われていたりします。「錻力」とかね。これはそのまま読めばOK。

さて、クイズ。漢字の問題というよりも、意味がわからないというタイプ。

鞦韆

宿の前に「青塗りの鞦韆」がある、という文章なので、宿の前にあるもので、塗ってあるんだから、花や木ではない、と。

答えはこちら

そもそも中国語で(語源は現代の意味とは違う)、それを日本語読みしたようです。中国語の繁体はこのまま。簡体は秋千。ピンインは qiūqiān(チウチエン)。

こんな有名な詩も。作者は蘇軾(苏轼)。またの名は蘇東坡(苏东坡)。

春宵一刻值千金,
花有清香月有阴。
歌管楼台声细细,
秋千院落夜沉沉。

あ、上に書いた「錻力」を忘れていた。ブリキです。これは完全な当て字ですね。

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